まさか昔、当時富山大学医学部の白木教授によるアビガンの新型インフルエンザについての講義が、今の新型コロナのためになるとは思いもよらなかったなぁ〜
インフルエンザの記事もどこか新型コロナに通じるところがあるので興味があれば見てください。↓
こんにちは。
SD(ソーシャルディスタンス)ババアにイライラしている、めでぃすけ(@Medisuke_tw)です。
今回は、急に知名度を上げた『アビガン(一般名:ファビピラビル)』について少し語ります。
アビガン特徴まとめ
Q1.アビガンの作用ポイントは?
A1.アビガンは、RNAウイルスに共通するRNA依存型RNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)に作用する。
↓補足↓
- RNAウイルスがそれぞれ持つ酵素の特徴的な構造部分に作用するのではなく、すべてのRNAウイルスのRNA合成に必須な活性部位に作用すると考えられる。
- そのため、各RNAウイルスの感受性(IC50:細菌のMICに相当)は異なるが、基本的に感受性がある。
Q2.アビガンの特徴は?
- 広域性(多くのRNAウイルスに有効性を示す)
- 耐性ウイルスが出ない(RNA合成酵素の基本部位に作用するのでその部位の変異が酵素としての活性を喪失することになる。そのため、耐性ウイルスが生じない)
- 日本では新型または再興型インフルエンザウイルス感染症に適応がある(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)
- エボラウイルス感染症の治療薬に使用された
- 新型コロナウイルスに対して国内外から有効であると報告あり
- 動物実験での催奇形性があり
耐性ウイルスができない理由と作用
(ここではDNAとRNAが頻出するので色分けします。書いてて意味わからんくなる・・・)
そもそもインフルエンザウイルスなど耐性ができたり、突然変異などができる理由として、RNAを作るときに生じるミスが原因にある。
人や動物の細胞やDNAウイルスなどDNAの複製では、間違った箇所を校正してくれる仕組みがある。(約100万分の1の確率で変異が起こる)
しかし、RNAを作るときは校正機能がほとんどない(約1万分の1の確率で変異が起こる。校正機能はあるという報告もり。)。
なので、RNAウイルスは宿主やDNAウイルスに比べて約100倍変異を起こしやすいというデータがある。
では、なぜアビガンが新型コロナウイルスや新型インフルエンザウイルス、エボラウイルスなどのRNAウイルスに有効でかつ、耐性ウイルスが出ないと言われているかというと、
- アビガンはDNAに取り込まれない
- RNAからRNAを作るときだけ*取り込まれる
- アビガンがRNA合成をストップさせる

https://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20200415/CK2020041502000038.html
結果、RNA変異は誘導されないし、耐性株もできる前にRNAウイルスの増殖を抑え込むことができるからだろう。(正確にはアミノ酸の変異は生じるが耐性ウイルスは出ない)
*アビガン(ファビピラビル)の構造がRNA合成の材料(プリン)に似ているので、細胞内でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代謝され、ファビピラビルRTPがRNA依存型RNA合成酵素を選択的に阻害すると考えられている。
安全性や副作用は?
アビガンはもともと新型または再興型インフルエンザウイルス対策として開発・治験を行ってきた薬。
しかし、実際には新型インフルエンザウイルスには使われずにここまできている。
そして、アフリカで感染していたエボラ出血熱では使われたことがある。
そのときは副作用などの報告はない。
今回の新型コロナウイルに対しても使用はされ始めていて有効性の報告はあるが、副作用はまだ報告がない。
臨床試験では、下痢や血中尿酸値上昇などが副作用として報告が多い。
しかし最も気になるのは、動物実験での『催奇形性』だ。
動物実験では、アビガン投与で初期胚の致死(ラット)及び催奇形性(サル、マウス、ラット及びウサギ)が確認されている。
なので、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこととなっている。
また、妊娠する可能性のある女性に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認し投与を開始すること。
そして、アビガンは精液中にも移行する。
ことから、男女ともに投与する際に催奇形性や胎児への危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後7日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導することとなっている。
もちろんデータの少なさから、投与期間中及び投与終了後7日間あいだを空ければ100%大丈夫ということはないだろう。
さらに治療開始に先立ち、患者又はその家族等に有効性及び危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始することともなっている。
以上のことから、新型コロナで心配な高齢者など、催奇形性の心配をしなくて良さそうな方には、基本的に安全性は高そうな薬だが、臨床試験のデータが少なすぎるので、心配事が多い薬という感じ。
症状として一刻を争う状況なら、迷わず使いたい薬という感想だ。
候補はアビガンだけじゃない
アビガン以外にも既存の治療薬などで、新型コロナに対して治験が開始されている薬、期待されている薬はいくつかあります。
- レムデシビル 注射用:抗エボラ出血熱ウイルス薬(世界のどの国でも認可・承認されていない)
- ロピナビル・リトナビル配合薬(カレトラ):抗HIV薬
- シクレソニド吸入剤(オルベスコ) 喘息治療薬
- カモスタットメシル酸塩(フオイパン錠他)、ナファモスタットメシル酸塩(注射用フサン他):蛋白分解酵素阻害薬
- 抗IL-6受容体抗体/JAK阻害薬:関節リウマチなどの自己免疫疾患
このほか抗マラリア薬(リン酸クロロキン)、ステロイド、ARB、漢方薬、既感染患者由来の血漿製剤の投与、ワクチンの開発が進められている。
どの薬もそもそも、新型コロナウイルスのための薬ではないので、本当にどれだけ効くのか、本来使うはずではない年齢、症状の方が使用するので、副作用などはどうなるのかなど不明点は多い。
なかでもアビガン(ファビピラビル)は、当初からほとんどのRNAウイルスに効くと言われていたので、今後色々な可能性を秘めた薬である。(レムデシビルと作用が近いのでレムデシビルは注射だが期待)
しかし、マイナスの可能性も秘めているので、プラス面・マイナス面を知った上で上手に使ってほしい。
すべての医薬品にいえることだが、改めて社会全体に理解してほしいことだと思った。