継続することがなかなか出来ないので、まず『三日坊主』になることを目標にしているめでぃすけ(@Medisuke_tw)です。
引き続きお題はデリケートな悩み、
『便秘』『便秘薬』
『薬剤師も知らなかった便秘への考え方ー後編ー』です。
後編ってことは、前編があります。↓
前編では、主に『便秘』についての内容でした。
後編では『便秘薬』に重点が置かれた内容になっています。
私のドラックストア・調剤薬局での経験から、実際の便秘薬の接客時の説明・対応・考え方などを備忘録として書きます。
「便秘はただ便を出せば良い」と思っていると、便秘薬に頼り続けてしまい以下の点で危険なので注意!
- 突発して起こる便秘や、便秘・下痢を繰り返すような症状はガンに続発する便秘の可能性がある。便秘の本当の原因である怖い病気に気づきにくくなる。
- 機能性便秘(腸の機能が衰えることで起きる便秘)は徐々に進行する便秘で、刺激性下剤を連用し、難治性の便秘になってしまう人は少なくない。
①本当に便秘薬使わわきゃダメ?
もともと、医薬品というものは治すものと言うより、症状を抑えるものというニュアンスが強いです。便秘薬も便は出すけど便秘の原因までは治してくれません。
なので薬を使わなくても、食事・生活習慣改善で治るようならその方が良いですね。
まず食事・生活指導
ドラックストアでは、症状の軽い便秘や、初めての便秘の方には整腸剤(善玉菌のみのものは基本、区分は医薬品ではない)や青汁など食品に近いものを提案することもありました。それらは、自然な形で便を出しやすくする以外にも体質改善効果が期待できるからです。
何より、たくさん薬を服用している高齢者にも比較的すすめやすい。(薬との飲み合わせのよくない食品もある)
これらは食生活改善みたいなことだから、症状がひどい人や、便秘薬をすでに服用している人でも、継続してもらいたいものです。
下には食事改善と生活改善について、状況に応じてアドバイスしている内容です。
食事改善
- しっかり三食摂取
食事は胃を刺激して排便促進シグナルを送る(胃結腸反射)
特に朝食は、大腸を目覚めさせる重要な合図 - 適度な水分摂取
水分摂取が少ない人に便秘症患者は多い
よく水分を摂って、便が硬くならないよう注意する - 食物繊維が多く、脂肪分が少ない食事
食物繊維は、大腸に良い刺激を与え排便を促す
多脂肪食は、大腸の運動を抑制する - 腸内細菌の改善
腸内細菌のバランスの改善が、便通促進に働く
ヨーグルトや乳酸菌飲料などを試してみる - 電解質やビタミン
カリウム不足は消化管の運動を低下させる
便秘には、ビタミンB1、C、Eの欠乏が関与
生活改善
- 規則正しい生活時間
生活リズムは自律神経活動に深く関与
起床、食事、就寝などの時間を、できるだけ規則的にする - 十分な睡眠時間
大腸は就寝中に翌朝の排便の準備をしている
睡眠不足の人に便秘症患者は多い - 便意を我慢せず、すぐにトイレへ
便意を感じたら我慢せず、すぐにトイレへ行き排便する
便意が無くても毎朝トイレに座り、5分間は排便を試みる - 適度なエクササイズと、その後の休息
適度な運動の後で十分休憩したときに、大腸は活発に動く
運動後にゆっくり休息をとらないと排便は促進されない - 自分の時間を作り、リフレッシュメント
ストレスは便秘の原因であり、増悪因子でもある
積極的に自分の時間を作り、悩みや不安を軽減する
排便スタイル!
ロダンの「考える人」や、和式便座で用をたす蹲踞(そんきょ)の姿勢が排便には理想的とされているんだぜっ!
上の図のように、一般的に排便姿勢は前かがみ35度が良いとされ、このとき直腸肛門角が理想的な130度前後になります。前かがみ35度になるのは、およそ「肘が膝につく姿勢」です。
人間の直腸はうまくできていて、直立したり、のけぞっているときは恥骨直腸筋で引っ張られ、排便が抑制されますが、前かがみになるとこれが緩んで排便しやすくなるんです。
②便秘薬を使おう!(本題)
前編でも少し書きましたが、便秘薬を使う場合、最初はまだ大腸癌などによる他疾患からの便秘の可能性があります。そのため、どんな便秘にも安全かつ有用な薬剤を選択するのが大切!最初の段階で腸を刺激して便を出させることは、腸に負担をかけて平滑筋の収縮力を弱め、ひいては難治性便秘になることがあります。便の軟化や通過を助ける便秘薬から試すのが良いでしょう。
刺激性下剤はレスキュー薬(頓用)として、週に2回以下が良いところだと胃腸科のドクターから聞いたことがあります。
このような薬物療法で改善が見られない場合は、直腸や肛門の病気が背景にあるかもしれませんから。
ここでは、市販の便秘薬でも医療用便秘薬でも便秘に対する考え方は一緒だと思って書いてます。
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ベースコントロールを非刺激性下剤(酸化マグネシウム、ルビプロストン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)、プランタゴ・オバタ種子又は種皮など)で便を柔らかくし、それでもひどい時に頓服で刺激性下剤(センナ、センノシド、ピコスルファートナトリウム、ビザコジルなど)などで大腸の蠕動運動を促進して便秘に対応するのが良いかと思います。
(紫:医療用・市販両方 オレンジ:医療用のみ 青:市販のみ ピンク:内服は市販のみ)刺激性下剤を使う機会が多くなったら、酸化マグネシウムなどベースの下剤を増量したり、他の非刺激性下剤を追加した方が良いと私は考えます。
しかし、便秘がひどい・良くならないという理由だけで、安易に効果の高い刺激性下剤を連用させたり、増量するケースは少なくありません。
一時的に便の出は良くなっても、便秘薬に頼るようになってしまったら、その患者のためになりません。そうすると薬の量も増えていくでしょう。
便秘薬に頼り続けて依存してしまっている方をよく見かけます。そうなると、もうなかなか減薬は難しいと思います。 - 実際、非刺激性下剤より刺激性下剤の方がリスクが有る分効きめは良いです。なので、非刺激性下剤で効果が無い場合は、刺激性下剤を追加もしくは切り替えになるかと思います。それでも、食事・生活指導は継続するべきだと思います。
長い間便秘に悩まされている人は、便秘薬に頼りすぎな傾向にあるので。 - 最終的には浣腸です。直接便も柔らかくし、直腸も刺激するので即効性があり効果も高いです。座薬も使うことがあります。
浣腸の使い方は、商品の説明書や医師・薬剤師の説明にしたがってほしいんですが、市販の浣腸には説明不十分な浣腸もあります。浣腸液を注入してから、すぐに便意が現れる人もいますが、基本注入してから3〜10分は我慢しましょう。薬が行き渡らず、効果不十分になることがあります。
実際の対応と問題点
簡単ですが、実際どんな感じで現場で対応しているかと、気になる問題点を。
ドラックストアでは
当然お客さんの便秘の程度・症状で、成分・商品を選びます。市販薬は金額とブランド(PB,NB)など知名度もお客さんは気になるところ。
- 最近、少し便の出に違和感や、少し硬めとかなら整腸剤、健康食品を。(ビオフェルミン、ミヤリサン、青汁など)
- はじめての便秘で優しいのと言われれば、漢方や生薬の便秘薬や有名なブランドの薬を。(タケダ漢方便秘薬、アロエ、センナ、酸化マグネシウム、DSSなど)
- なんとかしたい便秘、効き目の良いのと言われれば、市販の便秘薬で最強のビサコジル製剤を。(医療用医薬品には内服は存在しない)(コーラック、スルーラックSなどのピンクの小粒が謳い文句の商品)
- もう何日も便がでなくおなかが張った感じがあり、早く何とかしたいなら浣腸を。(ケンエー浣腸、イチジク浣腸など)
などなど、上記以外にもいろんな選択肢はあります。
しかも、選んであげるだけじゃなく、症状・併用薬・持っている薬などから、売らない!って選択肢も出てきます。「持ってる薬で代用できますよ」「それ便秘じゃない!」「今すぐ病院行け!」など。
問題点は、市販の便秘薬では非刺激性下剤(塩類下剤、DSSなど)は知名度と商品ラインナップが少ないこと。
刺激性下剤と非刺激性下剤の混合商品は、成分を見ると結構あるんですが。
しかし、市販では病院でよく処方されている酸化マグネシウム単剤があまり有名じゃなく、お客さんに認知されていないことが多い!最近、CMで健栄製薬の酸化マグネシウムをみることがありますが、他の便秘薬ほどCMにインパクトが無い印象。
なので、売る側もゴールデンゾーン(最も目にとまりやすい高さ)に酸化マグネシウムなどの塩類下剤を置くことはほとんど無いのです。(今はCM出てるんで違うかもしれませんが)
こんなにも、ドクターが処方している便秘薬なのに!
基本市販の便秘薬は、『すぐ効く』『効き目の良いもの』『知名度がある薬』がよく売れてしまうのです。
調剤薬局では
ドクターの処方箋どおり調剤するのが大前提ですが、患者から訴えや話した感じから、薬の量が多すぎたり少なすぎたりし間違ってない?と思ったらドクターに問い合わせします。処方されるのは、大体以下の種類の成分でしょう。
- 便を緩くして出す非刺激性下剤(酸化マグネシウム、ルビプロストンなど)
- 大腸刺激性下剤(センノシド、大黄、ピコスルファートナトリウムなど)
- 浣腸、座薬(ケンエーG浣腸、グリセリン浣腸、テレミンソフト座薬、新レシカルボン坐剤など)
問題点は、医療用医薬品は薬剤師が選ぶことは殆どないが、日々いろんなドクターが、科・専門分野関係なく処方することがあるのが便秘薬。
適当に便秘薬を処方して、あとは薬剤師任せなドクターもいるのです。なので用法用量、効果効能は患者にしっかり確認・説明しますが、「そもそも便秘薬必要?」「まだ続けるの?」など感じる事は多々あります。
あとがき
いかがでしたか?今回は身近な『便秘』『便秘薬』についてでした。めでぃすけの周りには市販薬が苦手な薬剤師が多かったので、少しおまけとしてドラックストアの話も交えてみました。ちょっと、おまけ要素が強く出過ぎたかな?
まだまだ書き足りないことがたくさんありますが、医療というのはどの分野をとっても、簡単には説明できないものであり、可能性は複数存在するもの。わかりやすくかつ、誤解されないように説明するのは
なので、これからもできるだけ誤解なく完結にまとめれるかを考え精進していきます。今回私には無理かもと思ったのはここだけの話